矢部太郎「大家さんと僕」

 

大家さんと僕

大家さんと僕

  • 作者:矢部太郎
  • 発売日: 2017/11/10
  • メディア: Kindle版
 

8年ぶりに雑読にきにコメントをいただいた。
8年って、長い。
2013年に開催が決まった東京五輪、「お・も・て・な・し」とか言ってたのにまさかのパンデミックで延期なんて誰が想像したでしょう。
まだブログが生きていることに驚愕しつつ、せっかくなので再開します。

「大家さんと僕」は、お笑い芸人の「僕」が80代の「大家さん」と同居した3年ほどを描いた4コマ漫画。「ごきげんよう」と挨拶し、新宿伊勢丹までタクシーで買い物に行かれる上品な「大家さん」と、売れない芸人の「僕」が淡々と暖かく日々をすごす、日常系漫画である。

「大家さん」がとにかく愛らしい。小さい頃に縁日で食べられなかったわたあめを思い出しては「恨めしのわたあめ!」と凄んでみたり、出版された漫画を読んで、「私小さくて垂れてる目がチャームポイントなの!」とダメ出しなさったり。「僕」と外食するときは器を愛で、固いものはmyハサミで小さく刻んでゆっくりと味わい、ほうじ茶を楽しまれる。

初恋の男性と健康ダンスの会で偶然再開し、玉川上水を見つめながら

87歳の夏は今しかないのですものね。

と乙女ゴコロも健在で。人生100年時代を優雅に軽やかに生きていらっしゃる「大家さん」を眩しく可愛く思う「僕」(アラフォー)の気持ちがよく伝わってくる。

「大家さんと僕」を読むと、シニアと若い世代の多世代同居に必要なのは、頼り頼られる相互依存の関係なのだろうなと思う。他人よりはだいぶ近い、でも肉親よりは遠慮がある微妙な距離感。何よりお互いを好ましく思う気持ちが必要で。フランスの「ひとつ屋根・ふたつ世代」政策に代表される多世代同居が各国で少しずつ広がっているけど、「大家さんと僕」のような成功例はどのくらいあるのだろう。うまくいったケースの最大公約数を調べたら面白そう。

…とここまで書くのに2時間。ブログを書き続けるのってマラソンに似てて、筋力が落ちると全然かけなくなる。衰えたブログ筋のリハビリを兼ねて、この夏は本を読もう。